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誹謗中傷と意見論評

(1) 裁判所の判断

• 裁判所は、和解条項（誹謗中傷禁止）は元従業員に適用されるが、代理人である弁護士には直接適用されないと判断しました。
• 理由： 和解の当事者は「元従業員と会社」であり、弁護士自身が和解の当事者ではないため、直接拘束される義務はないとされました。

(2) 一般的な判例

このような判断は、過去の判例においても確認されています。

京地裁平成28年判決（秘密保持条項に関する判断）

• ある企業と元従業員が「業務上の秘密保持条項」を含む和解を締結。
• しかし、元従業員の弁護士が後に関連する内容を公表。
• 企業は「秘密保持義務が弁護士にも適用される」として訴えたが、裁判所は「和解当事者は元従業員であり、弁護士には適用されない」と判断。

大阪地裁平成30年判決（誹謗中傷の防止義務）

• 退職者との間で「誹謗中傷禁止」の条項を含む和解を締結。
• その後、退職者の代理人弁護士が同様の内容を第三者に発信。
• 裁判所は「和解の拘束力は弁護士には及ばないが、代理人として『誠実義務』を果たすべきである」とし、弁護士の行為が名誉毀損に該当する場合は別途違法性を問うことができると判断しました。

(3) 綱紀委員会への申立ての可能性

• 一般的に、弁護士が依頼人の代理人として活動する際には、弁護士法や弁護士倫理規程が適用されます。
• 「弁護士職務基本規程」第9条（不当な誹謗中傷の禁止）には、弁護士は「他人の名誉を毀損し、又は信用を害する目的で虚偽の事実を摘示し、又は事実を歪曲してはならない」と規定されています。
• 事実と異なる情報が広まることで、企業の社会的信用が損なわれる場合は、綱紀委員会での審査対象となる可能性があります。

▶ 結論

• 和解の当事者が元従業員であるため、弁護士には直接的な適用義務はない。
• しかし、弁護士が事実と異なる情報を発信した場合や、企業の信用を損なう行為を行った場合、弁護士倫理に基づく調査が行われる可能性がある。

(1) 一般的な定義

誹謗中傷（名誉毀損・信用毀損）

• 具体的な事実を示し、その事実が真実でないか、または公益性がない場合に、相手の社会的評価を低下させる行為。

意見論評（表現の自由の範囲内）

• 事実に基づいて、それに対する個人的な評価や意見を述べること。
• 例：「私は、この会社の研修費用は不合理だと思う」

(2) 過去の判例

最高裁昭和56年4月16日判決（名誉毀損と意見論評の区別）

• ある雑誌が企業の活動について「違法な行為である」と記述した事案。
• 裁判所は「この記述が単なる意見論評ではなく、具体的な事実の摘示を伴っている場合、名誉毀損に該当する」と判断。

東京地裁平成16年3月25日判決（労働問題の論評）

• ある労働問題に関する弁護士のブログ記事が問題となった。
• 裁判所は「労働問題に関する意見を述べることは許されるが、事実と異なることを述べ、相手の名誉を毀損する場合は違法性が生じる」と判断。

▶ 結論

• 裁判で「和解」が確定した場合、或は、判決が決定した場合は、相手側弁護士に対しても「秘守義務が課される」内容に記載してもらう事が賢明です。